インド旅行記 ホーリー

SANSARA

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ホーリー


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3月も終わりに近い日。春を祝う祭り「ホーリ」でインド中が熱くなっている。
ここジャイプルでもホテルを一歩でるとその熱気が感じられる。

「今日は町中で色水や色粉をかけあうから外にいると巻き込まれるよ」
「昔は天然の染料を使っていたけど、いまはケミカルが多いから、目に入るとしばらく見えなくなることもあるから家の中にいたほうがいいよ」

アザムの言葉にしたがい、9時頃からはじまるその祝の行事を屋上から見ることにした。
アザムはムスリムなのでヒンドゥーのお祭りであるホーリーには参加しない。

屋上から見渡すとすぐ西側にタイガーフォートへ続く崖がそびえている。
そして周りの家の様子や入りくんだ家の間をぬって通る細い路地。
しばらくすると道を男の人が歩いてきた。白いルンギー(インドの普段着)には赤や緑の染料がべったりとつけられている。

ホーリーがはじまった。
バイクの2人づれ、牛や山羊。
子供たちの顔もその表情がわからないほど色水や色粉で染まっている。

太鼓の音や音楽が聞こえ、街中がカーニバルとなった。

「こっちへおいでよ」「下に降りておいで」

近所の子供たちが私たちに向かって手を降っている。
行きたいな。服なんか汚れてもいいから一緒にお祭りを楽しみたい。
はやる気持ちをアザムの言った言葉がおさえる。

「目に入ったら見えなくなるし、顔だって一週間くらいはとれないよ」。

子供たちの持っている水鉄砲を羨ましく思いながら、私は結局そのまま屋上でのホーリー見物だけにとどまった。


お祭りは2日間にわたって行われた。
そして、「静かな田舎へ行こうね」という最初の約束どおり、ホーリが終わった日の午後、私たちはバスで3時間ほどの小さな村、プシュカルへと出発した。

ジャイプルから3時間余り。
バスはアジメール止まり、そこからは別のバススタンドから乗り換えなければいけない。
バスを降りたところで声をかけられたリクシャに乗ることにした。

プシュカル行きのバスは地元の人たちでいつも満員になる。
この大きな荷物を抱えては大変だろうと想像できたからだ。

アジメールから道はすぐに山道にはいる。
岩に鮮やかなペンキで広告が描かれている景色を見ると、またこの村へやってきたのだという実感がする。
小さな山を越え潅木の林に入るとすぐプシュカルだ。

湖は村の東西にあり、その周りにへばりつくように200年もの昔から建っている屋敷や民家がある。
淡いブルーがかった白い建物は、特別な階級---ブラフマンにだけ許されたものだ。

周りにはなだらかな山々が村を取り囲んでおり、東と西には土と岩ばかりでできたお椀型の山。
頂上には寺院がほつんと建っている。
朝がくるとその白い建物はピンク色に染まり、夕暮れには一日の最後の陽のなごりを建物にとどめ、プシュカルは夜とばりの中に沈んでいく。

その昔、神々の頂点にあり、創造の神とうたわれたブラフマー。
その傍らに維持をつかさどるヴィシュヌと破壊と再生をつかさどるシヴァがいた。
これらの三神が一体となり世界を形成していたが、人々はブラフマーの存在を忘れたかのごとくいまやその信仰の対象はヴィシュヌとシヴァに二分された。

そんなフラフマーの、インドでも唯一の聖地がここ聖地プシュカルなのだ。

私たちが泊まったホテルは湖から東北の村の外れにあった。
湖を囲むように通るバザールまでは、しかしわずか5分ほどで行くことができる。それほど小さな村だった。

プシュカルへ着いて3日目。
バザールに買物にでかけ、通りを見渡せるレストランでチャイを飲んでいると近くの店の人たちが大慌てで通りに広げられた品物を片づけはじめた。

その時はあまり気にならなかったのだが、店を出てホテルへ帰ろうと元来た道を戻っていくと、ほんの1時間前とはうって変わった様子だった。
あれほど賑わっていた通りのすべての店が戸をしっかりと閉めている。

それは映画で見たことのある、そう。西部劇などで撃合いが始まる前に町の人たちが家の戸をしっかりと閉めてしまい、だれ一人いない道に風か吹いていく---。 
大げさに言えばそんな風な様子だが、違うところは観光客は興味深々で、村の人たちはこれから始まるイベントを楽しむために通りに繰り出していた。

ホーリーがはじまった。

「こっち行ったほうがいいよ。表通りに行くと色水をかけられるよ」

その声に誘われるままに左の細い脇道へ入って行った。
一軒の古道具屋の店先でホーリ見物になった。

白い馬の背に女神やシヴァ神が乗り色粉をふりまいている。
その後ろを楽隊がラッパや太鼓を鳴らして行進する。
行進が終わって表通りにでてみると、一面ピンク色に染まった道を掃除する商店の人たちや、ホーリーの洗礼を受け頭から足元まで色んな色に染まった観光客が歩いていた。

ジャイプルと同じく傍観者で終わってしまったことを少し悔やみながらホテルへの道を引き返した。 

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